行事と狙い

①「みんなの誕生日・未来をともにきぼうの日」(託児所開設記念日と武田桂二郎さんの命日を合わせて)

  故武田桂二郎さんは、子どもたちの未来をしっかり考えて柳下村塾託児所を作られました。日記や自転車、「コンキ、グウ」や正座、野外活動や体験田、食べ物のこと、託児所の日常のほとんどの事が武田さんの考えをもとにしています。グリーンコープの「四つの共生」「共生・平和長崎自転車隊」も武田さんの考えで始まり、今も続いています。道半ばで亡くなられた武田さんの遺志を受け継ぎ、これからも子どもたちと親の方々、支えてくれる仲間たちと一緒に武田さんを偲び未来を語り合う日、そして託児所開設記念日を祝う日です。

それぞれのパートで出し物を準備して披露し、食事を共にします。五月の初めの土曜日です。

 

②サマーキャンプ(7月最終の土日)

  科学の進歩、大量の情報と共に私たちは物が溢れ快適便利な生活に慣れてしまうと同時に、自然から離れ、壊してきました。キャンプは、家屋なく、電気、ガス、水道もないところで色々な工夫をし、力を出し合って寝食を共にしながら二日間を楽しく過ごすというものです。大人の手が減って少しスケジュールを省略していますが自転車で船小屋へ出かけ、流れの速い川で泳ぎスイカ割りをして食べ、また自転車で帰って来て食事の準備。小学生は火をおこして飯ごう炊飯。カレーやサラダや明朝の味噌汁の材料の切り込み、皆で準備をして、夕食のカレーとサラダをお腹いっぱい食べ、後片付けも自分たちで分担してテキパキと終わらせた後は、ろうそくの明かりの中で怖い話を聞いて肝試しに出かけます。怖がって泣き出す子や叫び声をあげてかけ出す子、絶対行かないと意地を張る子もいますが、終わってみると「おもしろかった~また行きたい」となります。夜、合宿のようにワイワイ一緒に泊まるのも楽しくてたまらない様子です。翌日はまた色んな所へ出かけますが、近年は大牟田の延命プールで遊んでいます。三度の食事も準備から後片付けまでたくさんの人手がかかり、子どもたちもたくさんの仕事を分担しますが、それよりも楽しい事がいっぱいで苦にならない様子で子どもたちは二日間目いっぱい楽しみます。 

 

③みんななかよしの日(不戦を誓う日)

  1979年7月1日から半年間、中国から暁甦・暁蕾という姉妹が来て託児所でともに過ごしました。終戦の時に両親と離れ離れになって中国で育った彼女たちのお母さんは、柳川に住む妹と両親に会うために来日されました。戦争のために家族が生き別れになるようなことが二度とないように、毎年7月1日を、戦争はしないと心に誓う「みんななかよしの日」としました。この日は、託児・小学生が一緒になって「若者よ」「青い空は」を合唱し、小学生の出し物と保母の戦争にまつわる紙芝居やスライドの出し物を見て、食事を共にします。子どもたちに戦争の悲惨さ、恐ろしさを知ってもらいたい、そしてそうならないでいけるように一緒に考えていきたいと願っています。 

④夏季特別活動(7~8月夏休み期間中)

 最年長児と小学生は月~金まで毎日野外活動に出かけます。朝一時間宿題や自学をし、それから自転車で一時間ほどの瀬高B&Gプールへ行って泳ぎ、お弁当を食べた後は高畑公園でキックベースや陣取り、ドッジボールなどの集団遊びをして、子どもの家に戻って反省会。

 じっとしていても暑い真夏の炎天下、5時間余りの野外活動は厳しいものがありますが、それを上回る楽しさ、頑張れた達成感もあり、子どもたちは「きつい」とか「休みたい」と言うこともなく、熱中症や事故もなく元気に充実した夏休みを過ごします。

 長期休みだけの参加で、自転車での遠出も集団遊び大圏も初めてという子も毎年何人かいます。初体験のハードな日課に、最初はきつそうな様子もありますが、周りの楽しい雰囲気、「がんばれ」という応援に、すぐに慣れて仲間と一緒に楽しく頑張るようになります。

 そんな小学生たちを、自転車や遊びのリーダーとして支えるのは、小学生教室を卒業して中学生・高校生・大学生になったO.B・O.Gの皆です。自分たちが育ってきた経験を基に、自転車の班のリ-ダーとして事故がないように先導し、パンクやチェーントラブルなどに対応し、水泳や集団遊びで下級生や力のない子も楽しく頑張れるように配慮します。リーダーとして人のお世話をするという経験は、トラブルに対応する力や自信につながり、生きていく上での大きな力となります。

 野外から帰って来ての反省会は今日の自分を振り返り、明日へつなげる作業です。人に言われるではなく、自分から「自転車で間を空けたので、これから空けないようにします」「深い方のプールでバタ足できたのでよかったです」などの反省をしますが、ややもすれば形式的に毎日同じ「反省」をするようになったり、他の子に文句を言ったりとなるので、リーダーや保母が按配します。「自転車でスピードが出せない子に「おそい」などと文句を言うよりは「がんばれ」と励ます」「ボールを投げたり受けたりが上手な子にばかりボールを渡さない。下級生もできるようにボールを回す」「自分と違う子、分からない子を仲間はずれにしない」というようなことをアピールします。

 最年長から6年生まで体の大きさも力も違う子どもたちそれぞれが自分の持っている力を発揮し楽しく活動しながら足りないところは補い合っていけるようにと思っています。

 うだるような暑さや疲れ、突然の雨なども乗り越えて、夏季活動が終わるころ、子どもたちは数段も成長しさらに逞しくしなやかな、人生の基礎とも言えるような心と体になっていくような気がします。

 ⑤共生・平和長崎自転車隊・銀輪隊

 長崎に原爆が投下された8月9日に向けて柳川から長崎までの不戦サイクリングをします。グリーンコープの取り組みになってからは、九州一円、山口から大阪までの組合員親子が参加しています。子どもの家の自転車隊は自転車で、小さい子は応援隊で、保母や親の会の大人たちは各班のリーダーとして参加します。

 厳しい暑さや延々続く坂道のつらさも、原爆の火に焼かれて死んでいった人たちを思えば頑張れる、応援バスからは応援隊の小さい子や大人たちが「がんばれ~!」と精一杯の声援を送り続けてくれる。「私たちは戦争はしません」「この世から戦争をなくしましょう」「原爆で殺された人たちが安らかであるように」そんな願いをアピールしながら二日間かけて爆心地の松山公園まで自転車で走り、「平和のつどい」の中で黙とう、平和アピールをします。参加者が体調をこわしたり、事故やけががないように気を配り態勢を整え水分補給や食事の準備もして下さるグリーンコープのスタッフの方々と、小さい子を抱えながらバスから降りたり乗ったりしながら懸命に声援を送って下さる応援隊の皆さんのおかげで、自転車隊は安心して頑張って走る事ができます。この不戦の取り組みが永く広く続いていくようにと思います。

 

⑥川清掃(9月中旬の日曜日)

 子どもたちがボートで探検をしたり、魚とりをして遊ぶ託児所の前の川。下水道の普及や市の水路課のごみ掃除のおかげでずい分きれいになりましたが、放っておけば水草や岸の草が生い茂り、ボートも通れなくなります。12月の忘年会の時には託児もボートで日吉神社まで出かけるので、毎年親の会と保母、小学生で川の清掃を行っています。大人たちはダバ(ゴムの服)を着て川の中に入り、鎌や鋸で草や木の枝を刈ります。小学生は刈った草をボートや箱舟に乗せて運び岸に上げます。川の中や船の上での作業は不安定で濡れて汚れて結構きついのですが、皆でやると結構面白いものです。清掃が終わりきれいになった川を見ると、心も清々しくなります。

 

⑦運動会(10月の第一日曜日)

 夏季活動で培った心と体で運動会に取り組みます。  

 準備から競技参加、後片付けまで参加者皆でやります。競技内容は、託児・小中学生・大人と分け、それぞれが自分の力を精一杯出しあいます。見に来ていた人でも飛び入りで参加できる競技です。勝敗はその都度はっきりさせますが、勝ったからと言って威張らない、負けたからと言ってしょげない、がモットーです。自転車走、太鼓など他にはない競技もあります。子どもも大人もそれぞれに力を発揮して頑張り楽しく過ごします。

 

⑧枝光体験田(農業体験)

 農業だけでは生活できない、後継者がいない、輸入作物に頼るなどたくさんの問題を抱える日本の農業は衰退し、減反政策や大量の農薬を投じる大規模農業などにより昔ながらの農村風景はあまり見られなくなりました。

私たちは命のある食べものを自分たちで作りたいと、親の方の田んぼと畑をお借りして、無農薬で米や野菜を作り始めました。畑には何度も堆肥や土を入れ、田んぼにも肥料を入れたり合鴨を入れたりして(鳥インフルエンザが心配されるようになってからは無くなりました)、最初は少なかった米の収量もずいぶん増えてきました。

冬、12月と1月に玉ねぎ苗と、ジャガイモの種イモの植え付け。暖かくなってくると草が伸びてくるので時期を見て除草作業をします。そして5月に玉ねぎとジャガイモの収穫をします。夏の除草は大仕事です。その年の天候によって収量は変動します。小さな芋も大事に持ち帰り、託児所の食材やおやつになります。

6月、田植えとサツマイモ苗の植え付けをします。田んぼの端から端まで引っ張った紐に合わせて一列に並び、一本一本手植えをします。ぬるぬるの泥の中にずぶずぶと足を踏み入れる感触は、格別です。色々な虫やカエルも沢山います。うっかりすると尻もちをついて泥人形のようになります。サツマイモのツルは土に斜めに入れて、後でわらをかぶせます。

7月~9月、苗が伸びるよりも大きく草が勢いを増してきます。草に負けないように、花が咲くまでに数回、田の草取りとサツマイモ畑の草取りをします。炎天下、稲と見分けがつかない草を選んで抜いていくのは根気のいる作業です。

10月、稲の収穫です。田植えと同じように一列に並び、年齢によって担当する列の数を決め、4束ずつ刈っては並べていきます。慣れている上級生はさすがに早いです。下級生は鎌でけがをしないように用心します。一方で大人たちが置かれている稲をわらひもで束ねていきます。託児所の小さい子たちは、束ねた稲を両手で抱え、架け干しの棚まで運びます。収量が多いと作業量も増えますが、嬉しい大変さです。刈り取りが終わり落ち穂を拾い集めたら終了です。皆で仕出しクラブの炊き込みご飯のおにぎりを食べ、刈り取りの済んだ田んぼで大人と子どもと一緒に鬼ごっこなどで遊びます。

11月、サツマイモの収穫と米の脱穀をします。

 サツマイモのツルはびっしりと地面を覆っています。まず、畑の端から並んでツルをノリ巻きのように巻いていきます。段々とツルは太く強く子どもの手には負えなくなってきます。巻き取ったツルは田んぼにばらまき肥料にします。次は三本鍬で芋を傷つけないように掘り起こすと、芋がぼこぼこと出てきます。子どもたちは移植ごてで回りを掘って残った芋がないかと探しながら集めていきます。大きさも形も様々。自分の顔ほどもある大きな芋を「ほら!でっかい」とみんなに見せたり深く入った芋をコツコツと折れないように回りを削ったり。最後の畝が終わるころには、焚き火の中で最初に掘った芋が程良く焼けています。田んぼで輪になって座り焼きたてほかほかの焼き芋を食べます。絶品です。

 ⑨忘年会(12月最初の土曜日)

 一年の締めくくりの行事。皆で美味しい会食を食べ、それぞれに出し物やゲームをして賑やかに盛り上がり、お楽しみ袋のプレゼントをもらってうれしい楽しい一日です。

 食事や会場の準備をしてもらっている間に、子どもたちは手作りのケーキのおやつを食べて公園に散歩に出かけます。この日だけは託児もボートに乗せてもらいます。日吉神社に着くと託児、小学生、中学生、大人も一緒に大縄跳びや陣取り、ドッジボールなどで思い切り遊びます。

 食事がすんだらお楽しみ会。託児と小学生の歌や、保母の人形劇、色々なゲーム、マジック、ゲストで琉球舞踊やエレキバンド演奏、ギター演奏なども披露してもらいます。後半は、大人たちがゲームやお話をしている間、子どもたちはみかんを食べたりプレゼントで遊んだり交換したり。おなかいっぱい、楽しさいっぱいの一日です。

 

⑩みなさんありがとうの日(卒園卒業を祝って)

 託児所・小学生教室を卒園、卒業する子どもたちをみんなで祝い、旅立つ子どもたちはこれまで育ててもらった感謝の気持ちを伝えます。舞台は農村環境改善センターです。

 前半は、子どもたちの歌やリズムダンス、劇、小学生の太鼓や劇、大人も太鼓や銭太鼓、劇などで精いっぱい自己表現し、祝います。後半、門出の式では卒園・卒業する子どもたちの紹介、作文の朗読、武田さんの書かれた詩「最年長児によせる歌」の朗読、子どもたちからと親御さんから、関わっていただいた皆さんへ感謝の言葉を伝えられます。会が終了してこどもの家に戻ると、反省・交流会をします。保母も親の会の皆さんも、子どもたちがまっすぐに元気に育ってほしいという気持ちでいっぱいです。

 

⑪初乗りサイクリング(3月末の日曜日)

 野外活動で徒歩隊、補助輪隊そして自転車に乗り習った子どもたちが自分の力で大小の坂を越え片道11.5㎞の船小屋まで自転車で往復するのを、皆で一緒に走り励ましお祝いする行事です。16インチや18インチの小さな自転車で往復23㎞の道のりを走り、幸作橋の大きな坂を越えるのはほんとうに大変なことです。でも、小さい託児から小学生、中学生、親の方々や周りの大人たちが、自分のことのように「がんばあれ!、がんばあれ!」と精一杯応援してくれ、それに応えてきつくても頑張って完走する子どもたちは、大きな自信と、人間に対する絶対的な信頼の心を身につけるように思います。そして4月からは最年長さんとして小さい子たちを守りお世話します。小学生になっても、大人になっても自分が初乗りをした日の事はちゃんと覚えています。