私たちの願い

社会状況はめまぐるしく変化し、厳しい状況はこれからも続き、未来は決して明るいとは言えません。

 その中で生きていく子どもたちが自立し、連帯していくために、逞しくしなやかな心と体、自律し共に生きる力を育みたいと思います。

 人との出会いを大切にし、幸せに人生を全うしてほしいと願っています。


こどもたちへの思いと狙い

(3)子どもたちの姿(と願い)

  子どもが生まれて一歳までに五感の基礎が育ち、三歳までに脳がほぼ完成し性格も定まってきます。「三つ子の魂百まで」と言われるように、です。だから、私たちは生まれてできるだけ早うちから、親だけではなく沢山の人の多様な関わりと愛情をもらい、色んな経験をすることで心豊かな元気な子どもに育つと思っています。託児は産休明けから就学前までの子が共に過ごし、学校から帰ってきた小学生の勉強する姿を見たり一緒に遊んだり、行事の時にはみんなのお父さんやお母さん、おじちゃんやおばちゃん、お祖父ちゃんやお祖母ちゃんたちが親身になって関わり遊んでくれます。皆が大きな家族のようです。

子どもたちは、年上のお兄ちゃんやお姉ちゃんたちを見て、「あんなことをしたい」「あんなになりたい」と憧れ、期待と意欲を持つようになります。同時に、小さい子には優しさと年上としての自負を持つようになります。でもいつでもお兄ちゃんやお姉ちゃんらしく振舞えるわけはなく、自己主張してケンカになったりします。誰でも自分を認めてほしいと思っています。だからちょっかいを出してみたり、ふざけてみたり、大声を出してみたり、ちょっと無理して頑張ってみたり、いろんな形で自己表現したり試してみたりします。そうして友達や大人の反応を見ながら物事の善し悪しや人のことを学んでいきます。大人が見て、いい事も良くない事も子どもたちの生きようとする力の表現です。そんな子どもたちに関わる大人たちの中に愛情があれば、自分が大切にされていると子どもたちが感じることができれば、子どもは安心して色んなことに挑戦し、力を伸ばしていけると思うのです。

 

(4)親の関わりと保母の姿(と願い)

①子どもたちは保母のことを「○○のおばちゃん」と呼びます。「先生」ではありません。そして他の子のお母さんのことも「おばちゃん」と呼び、保母の子は託児所では自分の母親も「おばちゃん」と呼びます。複数の母が複数の子どもたちを共に育てるという由縁です。子どもたち同士は、年上や年下、性別に拘らず名前を呼び捨てにします。大人たちも、自分の子と同じように子どもたちの名前を呼び捨てにします。年齢や性別で上下関係や差別を作らないでいこうと思うためです。

②親の皆さんは、自分の子と同じように子どもたちを大事にして下さいます。一緒に遊んだり心配したり喜んだりして下さいます。行事の時や農作業には、都合をつけて参加して下さいます。行事の内容を一緒に考え、準備をし、当日には一所懸命頑張って自分自身も楽しみ後片付けの後の交流会ではさらに良い行事にしようと感想や意見を出し合います。

  無名舎‐こどもの家の経営が厳しいとご相談した時は、「ここが無くなっては困る」と、色々な対策やアイディアを出して頂きました。 

子どもたちのためとはいえ、その気持ちと関わりにはただ有難いと思います。

   大人たちが自分のためや我が子のためだけでなく、人のため皆のために一所懸命頑張る姿を見て、子どもたちは大人に対する信頼と「共同」の気持ちを育てているようです。

③親の方々の子どもたちへの思いと、教育者としての願いを併せ持って保母は子どもたちと向き合います。

  自立して生きていく基礎を身につけるための学習や運動、基本的な生活習慣、自律し人と共に生きていく心を育てたいと願い、一緒に遊び、喜び、悲しみ、人としてこれはいけないという言動には厳しく注意します。

  「子どもは褒めて育てよ」という考え方が世の中の主流のようです。確かに、褒められれば嬉しくて、もっとやりたいという意欲が出るし自尊心も高まります。しかし褒められてばかりでは、うまくいかなかったときに挫折してしまいます。自尊心が強くなりすぎると傲慢になり人を見下すようになります。そして物事の善し悪しが分からなくなってしまいます。

私たちが子どもたちに「いけない」と訴えるのは、弱い者いじめ、嘘をつくこと、人を馬鹿にすること、わがままを通そうとすることくらいです。それもその子の年齢や心理状態、その場の状況によってその都度判断しながら関わります。

  何かができたとかうまくいったという時には「すごいね」とか「えらいね」と褒めるのではなく「できたね」「がんばったね」と認めてあげます。子どもたちは一人一人違う個性を持っています。あまり努力しなくても「できる」ようになる子もいれば頑張ってもうまくできない子や後戻りする子もいます。だから「誰でも一遍にはできないよ」「あきらめないで頑張れ」「コンキ、コンキ」と声をかけ、頑張ったことを認めてあげたいのです。

  私たちは固定観念で子どもを見ることを極力しないようにと思っています。「この子はこういう子だ」という目で子どもを見ればなにかあった時に判断を誤ってしまいます。また、「男の子はこういうもの」「女の子はこういうもの」と決めつけて「あなたは女の子だからピンクね」「あなたは男の子だから青ね」と子ども自身に固定観念を植え付けるような関わりはしたくないと思っています。昆虫やカエルなどの小動物を見て、女の子は「きゃー!」と叫んで逃げだすものだという固定観念もなくしたいと思っています。小さい頃は性別にかかわらず小動物に興味を持つのが自然です。周りの大人が「キャー、気持ち悪い」と言って触らせようとしないのか「あら、かわいいね。」と捕まえて「ちょっと触ってごらん」と言うのかで子どもの受け止め方は全く違ってきます。大人の固定観念は子どもに投影されます。

私たちは性別にかかわらず、自然や小動物に興味も持たず、魚にも触れないような大人になってもらいたくないのです。それは子どもの可能性や世界をとても狭くしてしまいます。「男らしく」とか「女らしく」ではなく「人間らしく」育ってほしいのです。

  

(4)小学生教室-その日常とカリキュラム(と狙い)

  月曜日から金曜日まで、小学生は学校から「ただいま」と帰ってきます。少し遠い子は、自転車やバスで来たり家から送ってもらったりします。それから、勉強が始まる五時までしっかり遊びます。二階で本を読んだりパズルをしたり、庭でサッカーやバドミントン、屋根ケン、缶けり、砂場でままごと、ボート乗り場でメダカとり、⋯用意してあるおやつを食べるのも忘れて遊びます。

   5時のサイレンを聞くと、二階の部屋にあがって掃除をしてから勉強にとりかかります。まずは宿題を終わらせること、時間があれば漢字や算数のテキスト、読書をします。1、2年生は6時10分まで、3年以上は20分までということにしていますが、お迎えが来るまで残った宿題をしたりぎりぎりまで遊んだり。

  土曜日は工作でおもちゃを作ったり、おやつを作って食べたりします。自転車で公園へ出かけて遊んだり、ボートで探検に出かけたりします。行事の前には、小学生の出し物の制作や練習もします。

  1年生から6年生まで経験の量も個性も様々な子どもたちですが、一緒に遊んだり勉強したり、けんかしたり叱られたりしながら、お互いのことを理解しあい、自己主張したり抑えたりして折り合いをつけるようになります。

  上級生が下級生に比べ体も大きく力も強く経験による知識もあり理解力もあるのは当然と言えるけど、だからと言ってそうでないものを見下したり威張ったりするのではなく、皆がそうなれるように頑張れるようにお手伝いしよう、教えてあげよう、励ましてあげようと、事あるごとに大人たちは子どもたちに伝えます。そうできない状況が生じた時には、子どもたちとじっくりと話し合います。

  午前中の活動が終わったら、全員で片付け掃除をします。上級生が場所と人数を見て、下級生の方から場所の希望を聞いて割り振ります。新入生は掃除の仕方も分からないので、掃き方や雑巾の使い方も手ほどきします。終わったらおばちゃんに「合格」をもらってその日の当番が雑巾洗いをしてベランダに干し、昼食となります。午後は基本的に自由ですが、出かける時は必ず行き先を言っていくこと、小さい子には上級生がついていくことにしています。

  

◎その行事(と狙い)

  小学生は無名舎の行事の大きな担い手です。準備作業・後片付けは大人と一緒に最後まで頑張ります。重い道具を運んだり杭を打ち込んだり、力のいる作業は男子の上級生が力の見せ所とばかりに頑張ります。食器を洗って拭いたり料理の下ごしらえは、女子が自分たちでテキパキと役割分担して上手にやります。(もちろんそれが楽しいからですが)自分たちの行事、自分たちの仕事と、労力をいとわないでやる姿には感心します。

  小学生独自の行事で春の一泊旅行があります。仲間と一緒に知らない場所へ出かけ、色々な体験をする旅行を子どもたちは一番楽しみにしているようです。卒業した中学生もリーダーとして参加します。観光旅行ではなく、体験学習が目的です。宿泊はほとんど少年自然の家を利用します。各地にある自然の家のプログラムでいろいろな素材を使った工作をしたり、山道でナイトウオーキングをしたり沢遊びをしたりします。そこを拠点に鍾乳洞の洞くつ探検や、漁船に乗って定置網漁を体験したり、色々な博物館を見たり、海で魚釣りをしたり、日本一の石段を登ったり化石を掘り出したり⋯。重い荷物を背負って何キロも歩いたり、船酔いしたり、暗闇が怖くて泣き出したりも貴重な体験です。けがや事故がないように6年生と中学生のリーダー・サブリーダーが班ごとについてお世話をします。大人の付き添いはそれを見守ります。夏季活動や長崎平和サイクリングの経験を積み重ねている子どもたちは多少困難な事にも取り組み乗り越える心と体を身につけているようです。

  冬には、福岡県の最高峰御前岳・釈迦岳の登山に挑みます。2月初めの一番寒い時期なので大抵は雪山になっています。小学3年生以上が登ります。行程約6時間の山道、鎖やロープを伝って凍った岩壁を昇ったり、冷たい沢を渡ったり、細い丸木の橋を渡ったり、一歩踏み外すと崖という所もあります。一方、7センチはある霜柱、1メートルほどのつらら、一面花が咲いたような樹氷、広い雪の道路での雪合戦や雪滑りなど、自然の厳しさや美しさに心躍り感動します。20年、30年と経験し慣れている大人たちが同行登山をして励ましながら事故がないように守ります。

  楽しいことの中にもきついことが色々あります。仲間たちや大人たちに支えられながら頑張って乗り越えていく経験の積み重ねのうちに、逞しくしなやかな心と体、人に対する信頼感や思いやりが自然と育っていくような気がします。

 

(6)共生学館

  中高校生の学習塾です。託児所出身の子だけでなく、市中から生徒たちが通っています。講師にはグリーンコープの仕事が終わって無償で応援をつづけてくださる方々、教師をされ定年を迎えられた方々、保母が担当をしてつきます。夏期・冬期講習、日曜日のテスト前自習会、中三生のフクト模試や入試前面談指導等にも取りくんでいます。

 

敬白